青柳菜摘さんのためし書き #みんなのためし書き
「みんなのためし書き」今回は、アーティストで、池袋にある「コ本や honkbooks」主宰の青柳菜摘さんです。
青柳さんはリサーチやフィールドワークを基軸に、言葉や絵、映像などさまざまなメディアを組み合わせて作品を制作されています。
重ね合わされた2つの手紙は、読み進めるうちに、えも言われぬ心地よい違和感が生じていきます。フォントや背景の色遣いは、文章の不思議な魅力を効果的に引き出していますね。
Q. なにをためし書きしましたか?
A.「送る手紙」と「送られた手紙」を書いてみました。
Q. それをためし書きしたのはなぜですか?
A.「送る手紙」(じいちゃん・ばあちゃん宛)は、一昨年スコットランドに行った時に書いたものなのですが、海外から日本に手紙を送る時の手続きが面倒くさく、iPhoneアプリで文章を打って写真を添付するとハガキで郵送してもらえるサービスを利用しました。
FONTPLUSのためし書きを開いて何を書こうか考えているとき、ふとそのことを思い出したので。
Q. どんな点を気にして書きましたか?
A.「送られた手紙」は、実際には私が書いています。
「送る手紙」と「送られた手紙」が、呼応してるようで、少しずつ違うことを書いているようにしました。
そして、それが画面からもわかるように。
Q. どんな流れで組み立てていきましたか?
A.まず、手紙と決めたので、当時の文を一旦書いてみました。
ディスプレイ上の活字を考えて、型がしっかりしているのでドット明朝にしようと決めて行間や文字間をいじっていたら、だんだんと行間が空いてきて、そこに返事が透けて見えてくる、ということもできるなと考えました。
ボックスを複製して書いてみると、基本は中央揃えなので改行するごとにすでに書いてある手紙と重なってしまうのですが、そういう手順も踏みながら「送られた手紙」を書き進めました。
両端揃えがなかったので、だったらいっそと思い山容※のようにしてみました。
※山容(さんよう):山のかたち。山の姿。(三省堂 大辞林 第三版)
使用したフォント:
ドット明朝
青柳菜摘
アーティスト。ある虫や身近な人、植物、景観に至るまであらゆるものの成長過程を観察する上で、記録メディアや固有の媒体に捉われずにいかに表現することが可能か。リサーチやフィールドワークを重ねながら、作者である自身の見ているものがそのまま表れているように経験させる手段と、観者がその不可能性に気づくことを主題として取り組んでいる。近年の活動に「彼女の権利——フランケンシュタインによるトルコ人、あるいは現代のプロメテウス」 (NTTインターコミュニケーション・センター [ICC], 2019)、「冨士日記」(NADiff Gallery, 2016)、第10回 恵比寿映像祭(東京都写真美術館, 2018)、「家の友のための暦物語」(三鷹SCOOL, 2018)など。コ本や honkbooks主宰。「だつお」というアーティスト名でも活動。
https://datsuo.com/
photo:shintaro wada